医療用手袋
医療用手袋のJIS規格とAQLについて
現時点でJIS規格が制定されている手袋は次の通りです。
- 単回使用手術用ゴム手袋 JIS T 9107:2018(改正)
- 単回使用歯科用ゴム手袋 JIS T 9113:2018(改正)
- 単回使用歯科用ビニル手袋 JIS T 9114:2018(改正)
- 単回使用検査・検診用ゴム手袋 JIS T 9115:2018(改正)
- 単回使用検査・検診用ビニル手袋 JIS T 9116:2018(改正)
手袋の品質に関し、JIS規格では手袋の寸法や水密性(ピンホール試験)、性能値や検査水準、AQLを定めています。
項目 | AQL | 検査水準 | ||
---|---|---|---|---|
手術用 | 歯科用 | 検査・検診用 | ||
寸法(幅、全長、厚さ) | 4.0 | 4.0 | 4.0 | S-2 |
水密性(ピンホール) | 1.5 | 2.5 | 2.5 | I |
物性(老化前、老化後) | 4.0 | 4.0 | 4.0 | S-2 |
AQL(合格品質限界)
AQLはAcceptable Quality Limitの略称であり、受け入れられる不良率の上限を数値で示しています。世界の多くの規格では、ピンホール不良に対するAQLは手術用ゴム手袋の場合1.5、歯科用手袋、検査・検診用手袋の場合2.5と規定されています。
感染管理と医療用手袋の役割
1.感染防止と手袋の歴史
医療従事者が手袋を着用する目的は、血液や体液、注射針やメスなどを介した感染・汚染リスクから医療従事者を守ること、医療従事者の手指を介して患者様に汚染物質が及ぶのを防ぐこと、そして医療現場の施設や物品が汚染されるリスクを減らすことにあります。
その感染対策の歴史は、19世紀中頃に、ゼンメルワイスが、医療従事者の手指の衛生について、患者の診察のたびにさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)で手洗いすることから始まりました。この頃はまだ無菌操作という発想には至っていませんでした。
1870年代、リスターが無菌操作を提唱し始め、患者を感染から保護し、そして、1889年ハルステットが医療従事者の手の保護のため、手袋を使用するようになりました。
当時は単回使用ではなく、再生で幾度となく手袋を使用していましたが、感染管理における手袋への認識の高まりおよびメーカーの製品開発・技術の改善もあり、1960年代に入ってからは手術用手袋はディスポーザブル化(単回使用)となりました。
また、安全上のリスク要因になり得ることから、厚生労働省より「2018年末までに一定のパウダー残量以下のパウダーフリー手袋への切り換えを行う」ことが通知(2016年12月付け)され、現在ではパウダーフリー手袋が使われております。
2.医療用手袋の種類
医療用手袋は医療現場での用途別に、手術用、検査・検診用、歯科用等の用途の3つに大別できます。
このうち手術用手袋は滅菌包装で密閉するなど適切な管理が必要なため「管理医療機器」とされ、製造・販売には第三者認証機関の認証が必要です。
また検査・検診用手袋も「一般医療機器」の一つとして届出制がとられている物もあり、手術用手袋と同じく再使用が禁じられています。
3.感染防止・管理のための医療用手袋の適切な使い方
手袋が正しく機能を果たさない第一の原因は、手袋の不適切な使用であることが研究によって明らかになっています。
間違った装着をしたり、不適切な使用はバリア性に重大な影響を与えるとともに、手袋のサプライ費用を著しく増加させます。
手袋のバリア性を弱める原因となるのは、ストレス、不適切な場所での保管、化学物質や薬、使用パターンと行動、処置内容と作業時間です。
医療用手袋の適切な使用方法は次の通りです。
【使用前】
- 目的とする処置に適した手袋を選択して使用する
- 時間の経過とともに劣化するので、使用前の滅菌包装の状態を確認する
- 特に、亀裂・ピンホールがないか、手袋をよく観察する
【使用中】
- 手術においては、色違いの手袋の二重装着を推奨する
※手術中にピンホールや亀裂が生じた場合の早期発見につながるため - 清潔・不潔処理の切替時や、手術中の時間を定めた手袋の交換を推奨する
【使用後】
- ディスポーザブル手袋は使用後必ず廃棄する
- 手袋をはずした後、手洗いを励行する
- 手袋は、適温な場所で正しく保管する
当工業会メンバーは今後とも、より一層の研究開発、品質改善への取り組みを行うことで、安心かつ信頼してご使用いただける製品のご案内に努めます。